慧一之水 えいちのみず

母の命日❷

やっと親子らしい生活で幸せな毎日。

ママは毎日、母のところへ浄水器の水を運んでくれた。

 

「韓国ドラマに東方神起が見れるけん、楽しかばい」と楽しそうに話し、

週に3日はデイサービスに通い麻雀も楽しんでた。

薬漬けの毎日だったが、体調的には悪くもなかったし、それはそれで面白かったらしい。

 

 

ある日、ママが水を持って行けれない日があった。

携帯に電話したが、出ないとのこと。

 

「ばあばが電話しても出ないんよ」

 

ま、充電が切れとるか、寝とんじゃろう」

と、その日はそのまま。

 

翌朝、再度電話してみる。

出ない。

デイサービスに連絡するも、日程が違うので会っていないとのこと。

 

気持ち悪くなり、もう一度、携帯に電話をしてみた。

しかし出ない。

ちょっと嫌な感覚になってきた。

用事を切り上げ、急いで家に行ってみる。

 

ベルを鳴らす。

何度鳴らすしても反応なし。

ここまで来ると、近所のことなんて構ってられない。

ドアを思いっきり叩く。

 

「お母ちゃん!!お母ちゃん!!俺たい健吾たい!!」

 

やはり返事がない。

 

まじか!嫌な感覚がさらに膨れ上がる。

急に手が震えてきた。

 

震える手で警察に電話。

 

数分後に警察と消防車が到着。

 

なぜ、消防車?

と思ったが、ドアを開けるのは警察ではなく消防隊員だった。

 

何故かチェーンが掛かっていた。

いつもは掛けないはずなのに・・・。

 

 

ようやく鍵が開いた。

入ろうとすると「息子さんは待っててください」

 

・・・

 

 

・・・

 

 

「どうぞ、入ってください」

 

トイレの扉が開いていた。

 

便器に座ったまま項垂れ、耳から血が垂れていた。

 

死後硬直も既に始まり、おそらく亡くなって、まる1日は経っていた。

 

家で亡くなった場合、俺が殺したかもしれないってことで事情聴取となる。

死因は分からず、案外適当に決まる。

 

【心臓発作】

 

ベッドに横たわった母と、その日は12時過ぎまで一緒に。

 

散々喧嘩してきたけど、さすがに寂しくなった。

こんなに近くに居たのに。

せっかく呼び寄せたのに、死に目に遭えず。

 

 

息子に近いうちに会いに来るって言うてたが、結局会うこと叶わず。

 

 

 

 

母には独特の匂いがあった。

タバコと何かが合わさったような匂い。

 

49日が終わるまで、たまに母の匂いがしていた。

 

「ばあば、遊びに来とるんじゃね」

見に来てるんだろうなと皆んなで話す。

 

9年経った今は、何も匂わない。

天国に2人で楽しんでくれていることじゃろう。

 

考えてみたら、このご時世、子供孝行の両親だったと思う。

介護が必要じゃない分、子供達に力を注ぐことができる。

 

来年は10年目、盛大にやろうかなと思うてます。

 

死はとても悲しい

そして切ない

生ある限り

生物は生き続けたい

人間とて同じ

生き続けんとして

いつしか、病か老衰につかまり

死の死者に連れ去られる

 

死は夫婦の中を引き裂き

親子をあえなくしてしまう

愛別離苦の苦しみを

頭では理解してもいても

やはり、ハラハラ、ハラハラと

涙は、とめどなく流れ落ちる

身内への愛は

ほとんどが執着であると教わっても

仏陀の言葉さえ、非情に響く

 

この世の命が尽き

愛する人と別れるのは

苦しくも、切なく、哀しい

わかっている

そうであろう

だが、人は死の下に平等

来世での再会を心の支えとしよう

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